〈注〉とめよう戦争への道!百万人署名運動の事務局次長であった小田原紀雄氏が『今、憲法を考える会通信 No1』で「百万人署名運動への永訣宣言」を出した。

百万人署名運動への永訣宣言

 「永訣」などと大仰な言葉を使ってでも自らの心を鼓舞せねば書きたくない文章を綴ることにする。
 手許に「とめよう戦争への道!百万人署名運動全国活動者会議 2009年8月22日 事務局からの提案 議事録・発言要旨」なる文書と「百万人署名運動通信第 143号」がある。これを読みながら、かつて日米安保条約新ガイドライン締結反対運動を署名活動を運動展開の中軸に据えて、全国各地で多くの方々のお知恵とお力をお借りしながら、80万人以上の人々に署名していただき、いわゆる新左翼系の大衆運動としては前人未踏の百万人署名達成まであと一歩のところにまで迫ったこの運動は、確実に「一党派」の路線をそのまま踏襲した「党派運動」へと明確に舵をきったと断定せざるをえない。
 先の全国活動者会議に「30連絡会52人が参加」とのことであるが、昨秋まで事務局会議に参加していた者の認識として、これが運動の実態を反映したものではなく、実際には既にほとんどの地域連絡会は活動が停滞しており、というより収束過程に入ってしまっており、当日のこの数は名称だけ残している各連絡会の事務局を構成する党派の活動家を動員した数でしかないことは明白である。それが証拠にこの1年間署名数はほとんど増加しておらず、当然のことながら「通信第143号」の 「8・22全国連絡会活動者会議報告」は会議の報告の体を為していない。無惨にも「報告」の4/5は「一党派」の浅薄きわまりないイデオロギーの羅列でしかない。同時に、「小異を残して大同につく」を運動展開の原則としてきた百万人署名運動が、この原則を投げ捨て、関西連絡会、兵庫県連絡会の両連絡会が「連合」が推進する「核廃絶1000万署名」にも取り組んでいるとして、「関西および兵庫の事務局と一致して運動することは無理であることを確認」したと分裂した「党派事情」そのままを露呈しているだけである。「〔1000万署名〕は、反戦反核の原点であるヒロシマ・ナガサキの怒りを北朝鮮排外主義にねじ曲げ、北朝鮮への戦争を煽るものです」という難癖はいったい何なのか。わたしも「連合」の労働運動の路線が誤っていると考えることにおいて人後に落ちないと思っているが、これはいくらなんでも陳腐過ぎるであろう。百歩譲って「核廃絶1000万署名」の路線が誤っているとして、しかしこれに協力したから百万人署名運動から追放することが認められるのか。現にとりわけ兵庫県連絡会は現在もまだ全地域連絡会の中で突出して「9条改憲反対」を掲げた「百万人署名運動」を展開しているではないか。現状は「党派」による「党派のための」百万であって、大衆運動の原則を大きく逸脱している。
 百万人署名運動はこの2年間、「裁判員制度反対運動」に取り組んできた。私自身裁判員制度に反対であるし、百万人署名運動がこの課題を担うことに反対でもない。しかし、これが主たる任務ででもあるかのように運動主体の全体重をこれにかけるのはいかがなものかと苦言を呈してきた。百万人署名運動はあくまでも「反戦・反基地・反核」運動の拡大から「9条改憲阻止」を目指して署名運動を展開するのが本筋である。「攻めの改憲阻止決戦」などという夜郎自大な言葉を用いて、「9条改憲反対を狭くとらえずに、道州制や裁判員制度と9条改憲=戦争国家化の問題として一体的に闘う」のは「党」の闘い方ではあるかもしれないが、大衆運動は課題を一つに鮮明にして、別の課題を担う他の運動体と共闘しつつ、民衆の解放を求めた大きな運動に合流していくのが本筋である。まるで大衆運動を理解していない。
 最後に私自身のことに若干ふれなければならない。「国労5・27臨大闘争弾圧」の「裁判方針をめぐっての当該の分裂」ではなく、明らかに「党派事情による当該の分裂」に対して、私が採った姿勢が「一党派」のお気にめさないようであるが、これと百万人署名運動とはまったく無関係である。また 「8・6ヒロシマ大行動には賛同せず、これに対抗してつくられた二つの8・6集会には賛同して名を連ねています」と書いているが、賛同要請さえよこさずにこういう噴飯ものの言いがかりを付ける。だがまた、これもまた百万人署名運動とは無関係である。要するに「一党派」が主導している運動だけに賛同すればいいので、それ以外の姿勢を採ることは認めないと言っているだけである。語るに落ちるとはこういう言説を指す。私は東京の事務局会議に「昨年後半の出席は2回で、今年に入ってからは1回も参加していません」。事実この通りだ。しかし、結果には原因があるのであって、結果だけあげつらってみても無意味である。
 もうこれ以上書き連ねるのはやめにする。とにかく既に私は今春から「横田耕一憲法連続講座」を開始して新たな運動のあり方を模索し始めているが、百万人署名運動とは「永訣」して、今秋から来春にかけて全国の仲間と共に、文字通り「小異を残して大同につく」改憲阻止の運動の構築へと進むつもりでいる。
 百万人署名運動で親しくしてくださったみなさん、お力をお貸しくださったみなさん、さようなら。どうぞお元気で。

 2009年10月20日
小田原紀雄

2009年10月25日 今、憲法を考える会・通信 No1
ピスカートル
PISCATOR…漁をする人
今、憲法を考える会
発行人 小田原紀雄
連絡先 東京都新宿区西早稲田2−3−18
   キリスト教事業所連帯合同労働組合

INDEX
inserted by FC2 system