《当サイト管理者から》
 中野洋氏が2010年3月に死去して以来、全国労組交流センターの代表として位置してきた入江史郎氏が、13年3月に代表を降りた。降りた理由はあきらかにされていない。だが、入江氏は、革共同がとっている路線、とくに動労千葉特化路線への違和感、批判を公然と語っている。これまでの労組交流センターのありかたについて、「限界がある」「守りに入ったら衰退し始める」といい、革共同にたいして、「新自由主義だけを語っている」、「外注化阻止しかやっていない」、「資本主義を真正面から全否定するものとして向かっていない」、「改憲阻止闘争を真ん中に位置づけていない」、「全国的に政治を動かしていない」という趣旨の批判を投げかけている。それに革共同の側は、田中康宏氏も辻川慎一氏も、否定的にしか対応していない。両者の間には、かなりの軋轢が生じていたのであろう。
 【 】内は管理者による註。黄色マーカーは、管理者がつけた。

全国労組交流センター第20回定期全国総会における代表運営委員の提起

入江史郎 代表運営委員 1日目 代表挨拶

11月1万人結集実現をどう考えるのか

 3点ほど話をして代表の挨拶とします。
まず一点は、この20回総会は3・11福島反原発闘争に合わせて期日を設定しました。2年前の3・11以降、福島を資本家支配階級が制圧するのか、あるいは労働者民衆がこの世の中を変えるためにわが手に入れるのか、そういう本質的な攻防が激しく闘われている最中です。よくぞこのときに福島交流センターが健在であった。このことが非常に重要です。支配階級もですけど、原発に反対する人たち、この震災の惨状を立て直そうという人の中でも、3・11を福島の現地で全国闘争としてやろうという勢力はわれわれ以外にないのがこの日本の現実です。同時に、われわれが最先頭にいるということを肝に銘じて総会を有意義なものにしてほしい。
2点目に、私見ですが、全国労組交流センターは何者で、その主体はどこにあって、どこに行こうとしているのかということです。せっかく結成から24年もった全国組織であり、しかもこの時代ですから、壊して新しいものを作るより、この全国労組交流センターを飛躍・発展させる方向でやった方がいいと思っています。財政などシビアな議論もふくめて触れて、闘える組織にしてほしいと強く思っています。
現状の交流センターの組織は、心ある個々の労働者の自覚で支えられています。本来は労働組合交流センターと言っているように、労働組合単位で加入することを期待して故・中野代表や佐藤代表が呼びかけたんだと思うんですけれども、ここの組織加盟について今年度はどうしても成果をあげないといけない。

3点目に、私が全国労組交流センターの代表をやってちょうど今年で10年になります。2003年のイラク侵略戦争の1カ月前に行った総会で中野代表の要請によって代表運営委員を受けました。冒頭に退任の挨拶をするのは何なんですが、今総会をもって代表を退任する運びになります。私自身は、ス労自主という交流センターの1加盟組合の委員長としてこれからも交流センターの発展に寄与したいと強く思っています。
今の交流センターの組織、運動について、こうでなければならないということはないんですが、元々創設者の中野代表の意向はできるだけそれぞれの持ち味を生かして、自力・自闘・連帯、もたれあいではなく、それぞれの加盟組織、構成要員が自らの責任と主体をもって運動を作り上げていく意向だったと思うし、それはある程度はできた。ただし今の労組加盟がほとんど進まない条件の中ではこの運動のこれ以上の発展は難しいだろう。あるいは、個々の労働者の志の高さと犠牲の多さで成り立っている運動には限界がある。運動は守りに入った瞬間に間違いなく衰退し始めていきますから、これから労働組合と名乗れるか名乗れないかは別として、ひとつの労働者の団結体ごとに組織加盟していくというような、本来の組織の形に一日も早くなるようにしてもらいたい。

(月刊『労働運動』2013年4月号(No277号)所収)

≪追加資料≫
代表運営委員 新年座談会――3・9〜10第20回総会(福島)の成功へ
2013年、国鉄闘争を軸に、交流センター運動の強化・発展で日本階級闘争を塗り替えよう

(冒頭部分略)

入江史郎(ス労自主中央執行委員長) ひとつ言いたいことは、新自由主義だけを語っていてわれわれの展望が出てくるのかなということだ。
 特に福島原発事故が起きて、日本の支配階級も世界中の支配階級も結局、21世紀のエネルギー問題をどうするのか、今バラバラで安定的にこれで行くと言い切れない。決定的な弱さがある。21世紀のエネルギー問題が、過去の人類史からずっと来て、今、地球一元的に問題を突きつけている。これでようやく階級決戦の条件が整った。今、支配者は「失われた20年」と言っているけど、資本主義は結局、自ら巨大な生産力とか物質力を持ちながら逆にそのことをすべて破壊しつくさないと延命できない根本矛盾を持っている。そこに断を下せるのは資本家階級ではなくて労働者階級でしかない。このことに対するしっかりとした確信が必要だ。つまり、資本家階級が21世紀のエネルギー問題を含めて制圧できるのか、労働者階級が登場して、次の時代に向かって挑戦していくのか。それが今だ。しかも国内で大きいことが起こっているから日本の労働者はすごいチャンスだし、どんな少数でもやってきたわれわれにチャンスがあるし、時代的な責任もある。
 それで今日はその話をしないと、3人が集まって話す意味はないと思ったんで言いますが、そこから見ると、外注化決戦【外注化阻止決戦】が小さいと言うのではないんだけど、二人【田中康宏氏と辻川慎一氏の二人】にはそこだけに没頭してほしくないという思いがある。

(中略)
資本主義が文字通り3・11もふくめてあるべき姿をさらけ出しているわけで、そこにわれわれが資本主義を真正面から全否定するものとして向かっていかなくちゃ話にならない。逆に少数だからその突破口を切れるという気がする。分・民のときは、日本の労働運動がすべてをかけるような闘いができなかった。その突破だ。

(中略)

辻川慎一(動労水戸副委員長) 10・1以降の状態を見ると、やっぱり甘くない。出向させられた本人たちは3年後にまた戻ると思ってたんだけど、実際上はやっぱり3年後はないんだよ。外注化強行されたら社員扱いをしない。ちょうど僕らが分割・民営化に反対して職場を外されたときみたいな。MTSの制服を着て向こうに行った連中を、残った平成採と歴然と別扱いにする。すさまじいですよ。彼らは、自分は大卒だし会社のために貢献したのにと愕然としている。実際上資本との「経営構想X」との激突や、10・1後、駅の外注化が提起されたり、ホーム自動ドアが入ったりとか、ものすごい攻勢です。基本的には全面外注化です。だからその壮絶な攻撃に対して腹を据えたやつが引っ張っていくというさ。
 もちろん入江さんが言っていることを否定しているんじゃなくて、その攻防を勝ちきれないところで他の産別でこうだよと言っても通用しないところがある。もちろん自らのところで闘いつつ全国指導をやらなきゃいけない。そこに踏み込まなきゃ交流センターとしてはダメだと思うんですけどね。
入江 同時にやることを考えてくれ。
田中康宏(動労千葉委員長) 本来は入江さんの言うとおりで、同時にやらなきゃいけないと俺も思いますよ。

(中略)

入江 国鉄闘争を基軸に、4大産別決戦をあらためて各産別が責任をもって具体化をしてほしい。願望的にはもう少し共に闘う労組を集めたい。国鉄闘争の精鋭が署名運動でも名前を連ねてくれていますけど、彼らが元気なうちに彼らの力を借りて全国にもっと具体的に打って出て労働組合をこの闘争に獲得していかないと結局自己満足に終わってしまう。この1年は重要です。 それからやっぱり改憲が対決軸になっていく。僕自身個人の考えでは、改憲阻止で安倍政権と真正面からどんな少数でもぶつかることだ。改憲阻止闘争を闘う集団として名乗りを早く挙げておきたい。そこはわれわれにとっては絶好のチャンスだから。護憲派ではダメだって批判的に言っている者は話にならなくて、資本主義の手伝いをしているだけだ。改憲阻止というきちんとした登場の仕方が護憲勢力をふくめて獲得して勝利の展望をつくる。この半年間で改憲阻止の路線を打ち立てるべきだ。それが戦後労働運動の再構築なんじゃないかな。反原発についても改憲阻止なき反原発は間違いなくつぶれていくだろう。来年はしょっぱなから、特に通常国会は間違いなく改憲だ。具体的には憲法審査会を稼働させることから入ると思いますけど。そこらをしっかりと闘争していく。
田中 改憲問題は間違いなく対決軸になる。もう一回正面から掲げないといけない。その中身とか具体的にどういう闘争をするのかは議論しないといけないけれども、改憲をめぐる支配階級の内部の分裂が始まると思う。
入江 もっと一気に行くんじゃないの? こちらが改憲阻止闘争をきちんと想定して真ん中に位置付けるべきじゃないかな。そのなかで敵の分岐とか、中でもっと大きな闘争として育っていく。それが終わってからじゃ手遅れだよね。
辻川 ただ方針にかかわることでは、ぜんぶの決戦が組織拡大決戦だと言っていかないと、改憲阻止もにわかにそうだねとは言えない部分がある。つまり改憲阻止だって労働者が決起することなしに改憲阻止にならない。改憲攻撃は労組破壊としてしか貫徹されないわけだ。結局、外注化阻止も、再稼働反対も、そのことをめぐって自分たちが労働者の決起をつくるという強烈な目的意識性が必要だ。そこをめぐって闘争しているわけであって、だから組織拡大というのは、闘争と別に組織拡大があるんじゃなくて闘争をめぐって必ず組織拡大に集約されなきゃ全然貫徹したことにならないんだということが重要なことだと思うんですよ。

(中略)

入江 労組交流センターを結成して労働組合の交流センターにしようと思ったけど、なかなかそうなりきれないまま、ここまで来ている。労働組合を組織対象としていくという具体的な組織方針が不可欠だ。まず、党員や交流センターメンバーがいる身近の労働組合をきちんと組織する作業をやるべきだ。なぜそれをやらなければいけないかというと、実は動労千葉も港合同も関生も唯一共通しているのはローカルユニオンなんですね。強力だけど地方組合だ。これが全国的に政治を動かす、権力を取るということはそれだけだと大変だ。やはり東京が政治の中心、権力の中心です。

(後略)

(月刊『労働運動』2013年4月号(No277号)所収)

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