《当サイト管理者から》
 水谷保孝・岸宏一著『革共同政治局の敗北』(2015年5月刊)が出版され、新左翼党派や社会運動に関心のある向きで非常に大きな話題となっている。それに対して、当の革共同の側は著者らを「スパイ」とし「打倒する」という政治局声明を発した(『前進』5月18日号)。著者側からの態度が表明されているので、掲載する。
 なお、『前進』は同様の趣旨で5月25日号に革共同関西地方委員会声明、6月1日号に同東北地方委員会声明を掲載している。他の地方委員会の声明もこれらに続くものと思われる。1冊の本に対する組織をあげての政治的キャンペーンであり、革共同史上異例の事態である。

清水丈夫よ、うろたえるな‼ 真実を正視するのだ‼


『革共同政治局の敗北』出版に動転し、禁書不買運動=政治局忠誠運動で墓穴を掘る革共同

2015年5月25日/水谷保孝、岸 宏一


1 ご購読に感謝

 『革共同政治局の敗北 1975〜2014 あるいは中核派の崩壊』を読んでくださっている皆さんに感謝申し上げます。
 本書は5月12日発売(模索舎で先行販売)から多くの方々に購入していただいています。短期間で各書店の店頭にないという状態が生まれ、左翼文献としては予想外の事態であるといわれています。本書は現在、在庫切れで重版中です。6月15日頃には書店に並ぶ予定ですので、もうしばらくお待ちください。
 筆者らの元にはすでに数々のご批評が寄せられており、御礼申し上げます。いずれ、何らかの形でご批評にお答えし、大いに議論する機会がもてれば嬉しいかぎりです。
 何よりも革共同の中央派に残っている党員、関西派に属している党員の皆さんには大いに異論、反論もおありでしょう。どしどし意見を表明してください。何ものにも縛られない主体的な議論のための素材として、私たち筆者の官僚主義的誤り、愚かさを含めて政治局史の真実を明らかにしたのです。

 さて、革共同中央政治局派が本書出版にすぐに反応し、筆者らを「史上最高のスパイ」などと自分ら自身が信じてもいない空疎なレッテルを貼った党声明を公表しました。同時に、全国的に禁書不買運動を組織しています。「スパイの本だから買うな、読むな」と。予想されたこととはいえ、何と見下げ果てた姿でしょうか。この問題につき、私たち筆者の見解を明らかにしたいと考えます。

2 政治局声明の筆者は清水

 私たちが『革共同政治局の敗北』を出版したことは、革共同中央政治局派にとって想定外の事態であったようだ。
 本書を手にした清水丈夫氏はかつてないほどの衝撃を受け、それを精読する精神的余裕もないまま、どう対応するか苦慮したあげく、大急ぎで政治局声明(元原稿)を執筆し、原稿とそれに付随する指示書を特急便で前進社本社に送った。
 それを受けた天田三紀夫氏は城戸通隆氏(前進編集長)らと協議し、清水氏からの指示にもとづいて元原稿を若干加工して政治局声明を仕上げた。つまり「福島大でスパイを摘発・粉砕」の記事を元原稿に接ぎ木したのである。その意図は後述するが、清水元原稿では「岸・水谷・岩本=スパイ規定」があまりにも唐突で、何の根拠もないため、その補強(実際には補強になっていない)として無理を承知で「福島大スパイ」記事を差し込んで、それを含めて一本の声明文としたのである。そして当初予定の別原稿を没にして急きょ紙面を作り変え、それを掲載した。
 そうしてできたのが声明「革命運動史上最大のスパイ分子に転落した岸・水谷・岩本を打倒せよ/革命的共産主義者同盟政治局」(『前進』2681号、15年5月18日付)である(以下2681号声明とする)。したがってこれは、つぎはぎではあるが、その点も含めて清水声明というべきものである。上述の事情は筆者らがつかんだものである。
 さらに、その次号でも「党の革命で打倒され権力にすがる最大のスパイ岸・水谷・岩本許さぬ/革共同関西地方委員会」(『前進』2682号、15年5月25日)を掲載した。これ以降も同様のキャンペーンが続くようである。恥の上塗りである。

3 無関係の岩本氏を「完全打倒せよ」は前代未聞の大誤爆

 2681号声明=清水声明は、清水氏のうろたえぶりとその浅薄さを見事に満天下にさらけ出すものとなっている。その第一の問題点は、本書とまったく無関係な岩本慎三郎氏をまるで「共著者」であるかのように写し出し、「岸・水谷・岩本を打倒せよ」とわめいていることである。平静さを失い錯乱したとしかいいようがない清水氏のありさまである。
 本書「諸言」で書いたように、本書の成立には多くの人たちの協力があった。過去にさかのぼっての聞き取りや革共同の歴史的内部資料の提供などがあったおかげで、私たち筆者ら二人だけではカバーできなかった領域、諸問題が掌握できた。その一方、筆者らは、岩本氏には何の協力要請もしなかった。“本を執筆している”という話もいっさいしなかった。それには理由がある。その理由は、岩本氏ご本人を始め、分かる人には分かることである。
 一つだけいうと、06年3・14党内テロ・リンチ(3・14U)への筆者らの対応と岩本氏のそれとはまったく相反するものだったという点がある。つまり、岩本氏は3・14Uに賛成であり、本書の立場とは異なり、著者になりようがないのである。本人も本書への協力を望まないであろう。したがって取材も何もしなかったのである。

 ではなぜ、清水氏は、岸、水谷と、本書とまったく無関係の岩本氏を同列に並べるという愚かなことをしたのか。本書を執筆したことが岩本氏の「罪状」であるといいつのり、こともあろうに岩本氏まで「完全打倒せよ」というのだから、前代未聞の「大誤爆」である。では、なぜそんな大誤爆を犯してしまったのか。

4 党内恫喝と政治局忠誠運動が目的

 そもそも2681号声明は、同書の著者二人に向かっての攻撃、反論という以上に、何よりもまず党内向け、党内恫喝のためにうち出されたものだからである。清水氏は、本書が革共同内にさまざまな影響を与え、本書に共振する人々が生み出されるに違いないと恐れおののいた。革共同政治局史である本書によって清水氏の虚像がはぎ取られ、実像が党員に明らかになることに、清水氏は心臓が止まるような衝撃を受けた。まず清水氏が考えたことは、党員が本書を手にすることを何としても阻止するということだった。そのため組織内批判勢力のいわば政治的象徴として「岩本」という名前を大写しにしたのである。
 それが証拠に、中央派は2681号声明掲載と同時に、本書を禁書扱いとし、党内で「買うな」「読むな」という通達を出した。党内だけではない。支持者や元党員を回って、「買うな」「読むな」という恫喝を加えている。つまり党員をして支持者、元党員への禁書不買運動に駆り立てている。党員一人ひとりに本書が禁書であることを認めさせる踏み絵をさせているのである。
 筆者らのもとには、「中央派があっちで不買を恫喝している」、「こっちで読むなと威嚇しに来た」といういくつもの情報が寄せられている。買うな、読むなといわれれば、革共同関係者はむしろ強い関心をそそられ、購買することになる。本書の宣伝効果を高めるだけなのである。
 この愚かしい禁書不買運動は、党内に根強くかつ広く散在する反中央派の人たちが本書購読を契機に、清水氏および政治局への反乱を起こすのではないかという異様なまでの恐怖にもとづいている。だから、岸・水谷に「岩本」をあえてつけ加え、そのことで“組織内批判勢力は岸・水谷に連なっているとみなす”と恫喝しているのである。
 今や革共同中央派は、『革共同政治局の敗北』をめぐる禁書不買運動と政治局忠誠運動で大童となっている。党員全員に「同書はスパイの本である。買わない。読まない」といわせる踏み絵運動を必死になって組織しているありさまである。この状況はおそらく日を追うごとに、つまり本書が重版となりさらに多くの人々が手にする度合いに応じて強まることであろう。

5 吹けば飛ぶよな「スパイ」レッテルは完敗の表明

 2681号声明=清水声明の第二の問題点は、清水氏自身が岸、水谷がスパイであるなどとは思ってもいないのに、本書に追いつめられて「史上最大のスパイ」と書いてしまったことである。何の反論も反撃もできないから「スパイ」のレッテルを貼るしかなかったのだ。
 本書で私たちは、本多延嘉書記長がカクマルによって虐殺された1975年三・一四反革命以降、清水氏が日本帝国主義国家権力打倒のたたかいから本質的に逃亡するというスタンスをとってきたこと、革命闘争の垂直的対決構造の鮮明化を避け続けてきたこと、同時に革命闘争のもつ水平的対決構造をなす対カクマル戦、何よりも三・一四復讐戦を貫徹するのではなく、対カクマル戦の仮象づくりにいそしんできたことなどを明らかにした。そこにおける筆者らの誤りや腐敗を自己切開し、清水氏執筆の数々の論文や政治局会議や個別討論での清水氏のいくつもの発語を系統的に検証し、折々に感じてきた疑問と照らし合わせ、前述の結論を得た。清水氏は対権力中央政治闘争において降伏し、尻尾をまいてしまった負け犬であったのだ。
 本書第2部の主要テーマはこの清水政治局問題の総括であり、私たちの自己批判を含めて、政治局史の真実を明らかにすることができたと思っている。
 清水氏がやるべきことは、本書が明らかにした真実を正視することである。そうではないのか。天田三紀夫氏ら現政治局員らも同じである。
 だから、負け犬根性の清水氏が私たち筆者に「スパイ」のレッテルを貼っても、誰も説得することができるはずがない。2681号声明を読んだ誰もが、「スパイ」規定など無視してしまう。逆に誰もが、「そうか、『革共同政治局の敗北』が突き出したことは図星だったのだな」と納得するだけである。
 革共同の党員で「岸・水谷がスパイ」という党声明をそのまま信じた者が誰かいるだろうか。誰もいまい。天田ら中央派政治局は大慌てで、「朝日新聞と東京新聞に広告を出した。岸・水谷に広告費を出せるわけがない。権力が金を出して広告を打たせたにちがいない。だから岸・水谷はスパイだ」などと弁明しているそうである。まったくお笑いである。
 しかし、いやしくも長きにわたって労働者人民から認知されている公党である革共同がその公的な機関紙で、生身の人間にむかって「スパイ」呼ばわりしたのである。ことは笑い事ではすまされない。
 清水氏に問い糺す。
 岸・水谷のどこがスパイだというのか、岸・水谷がやったことの何がスパイ行為だというのか、労働者人民の前に明らかにすべきであろう。一体全体、岸・水谷は何という権力機関のスパイだというだろうか。どういう権力機関から金をもらったというのだろうか。『革共同政治局の敗北』のどこが、どう反革命スパイ本だというのだろうか。
 筆者らはすでに9年前に革共同をやめている。その党員ではない人間を名指しで、ありもしない「スパイ」のレッテルを貼った以上、すべての労働者人民が納得する説明をしなければならない。そうでなければ、権力とたたかう人々が革共同から得手勝手に「スパイ」呼ばわりされることにつながりかねない。それゆえ、革共同議長・清水氏には「スパイ」レッテルについての説明義務、証明義務が発生していることを十分に自覚しなければならないのである。デタラメきわまるデマがいいっ放しですまされるわけがないのである。

 最後に一言する。
 清水氏は『革共同政治局の敗北』をまったく読み込めていない。2681号声明は、清水氏のうろたえぶりを浮き彫りにしているだけである。動転して書いた声明の政治内容はすべて、あまりに貧弱で、愚劣である。清水氏は、吹けば飛ぶよな「スパイ」レッテルを貼るのではなく、『革共同政治局の敗北』が克明に論証した革共同政治局史の真実、すなわち己の真の姿を正視するがいい。それがあなたのやるべきことである。

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